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蘇芳との友人関係は思ったよりも円滑だった。
思ったよりも蘇芳は話しやすかったし、そもそも周りからの冷たい視線を蘇芳は全く意に介していない風に見えた。
俺は、持ち前の村人A属性で、モブとしてひっそりと学園生活を過ごしていた。
蘇芳は過度の接触を好まなかったし、休み時間に少し話をして、昼飯を一緒に食べて、たまに夕食を共にする。その程度の関係だ。
向かい合って食事をして、蘇芳が顔を上げた時にさらりと流れる黒髪を眺められればそれで充分だった。
俺は自分の恋心を成就させるつもりもなかったし、蘇芳も応えるつもりは最初からないだろう。
一人で本を読んだりゲームをしたりする時間は死守したかったし、まあ丁度いい距離感だったと思う。
大して会話が無くともお互いあまり気にならなかったし、蘇芳のする話はいつも興味深かった。
生徒会の仕事が無くなって、俺にとって時間は穏やかに過ぎていく。
生徒会から外された蘇芳本人の葛藤や家族のことはあえて触れなかった。
本人もきっと聞かれても困るだろう。そこまで踏み込んで仲の良い友人になれているとはとても思えない。
蘇芳のことは蘇芳が折り合いをつけていくことなのであまり気にはしていなかった。
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