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蘇芳はそれでも馬鹿にした表情でも無かったし、何も言わずこちらを見ていた。
ただ、その瞳だけは初めてまともに蘇芳を認識した瞬間のあのガラス玉の様だ。
「俺は、お前に何か求めたことは無い筈だ。
そもそも、蘇芳と付き合いたいとかって、俺自身が思ったことねーよ。」
付き合いたいと思ったことは無い。
恋人になった自分と蘇芳を想像しようとしたことがあるが上手くいかなかった。
別に男の体を見てもドキドキすることは無いし、自分の尻をいじりたいという欲求もない。
だから、という訳でもないが付き合いたい願う気持ちは無いのだ。
「それが気にくわない。」
いつもの優しげでない声色が蘇芳のから聞こえて彼の顔をしっかり見るが、相変わらず優し気な表情を浮かべていて意味が分からない。
そのまま、立ち上がる蘇芳を意味も分からず、ぼーっと眺めていると俺の眼の前まで来てそれからしゃがみ込んだ。
いや、正確にはその後、俺の肩を押して、押し倒したのだ。
「あんた、何して……。」
のしかかってきた蘇芳を見上げる。
その目は相変わらずガラス玉の様で何を考えているのかまるで分からない。
「好きです。」
言われて、思わず目を見開いた。
蘇芳は冗談を言う様なタイプでは無いし、そもそも嘘をつくメリットが思い浮かばない。
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