498人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
それだけだった。
卒業をして、新たな環境でお互い別々に生きていくものだと思っていた。
そもそも、共通の話題もなかったし、お互いに一人が好きだ。
高校を卒業したら会わなくなってそれでおしまいだ。
お互いに口にしなくても茨木もそう思っていたに違いない。
でも、俺が駄目だった。
茨木が隣に居ない生活に耐えられなかったのだ。
水の無い場所で生きる魚の気分だった。
茨木のことを可愛いと思ったことも美しいと思ったことも無い。
けれど今は自分のものにしたいと思うし、茨木も、俺無しでは生きていけない様になればいいと思った。
そこで、ようやく、俺も茨木を愛してしまったことに気が付いた。
メッセージアプリで連絡を取ってみようと思って止めた。
彼の現在の居場所を確認することは簡単なことだ。
多分きっと、たとえ茨木は今でも俺のことが好きだとしても、自分のテリトリーに入られれば逃げるだろう。
漠然としてはいたが確信があった。
ならば、逃げる暇を与えなければいい。
そう決めると、俺は茨木の現在の居住地であるマンションへと向かった。
了
最初のコメントを投稿しよう!