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そんな小さなことが嬉しいと思う様になるなんて高校時代の自分には考えられなかった。
ミルクたっぷりめのコーヒーをマグカップに入れて茨木に差し出す。
「ありがとう。」と律儀に言ってマグカップを受け取ると茨木は目を細めて珈琲を飲む。
ほぅっ、と男子大学生に似合わない可愛らしい吐息をだして、それから茨木はローテーブルにマグカップを置いた。
すぐに茨木の視線は再び開いた文庫本へと向けられる。
恐らく、茨木は高校時代からこうだったのだろう。
あまりにも自然すぎて俺が気が付いていなかっただけで、ずっと茨木は俺から見て好ましい行動ばかりをしていたのだろう。
丁度、大学のレポートが立て込んでいたので、ノートパソコンを立ち上げて俺はその作業に、それから気を取られることになった。
ようやく、大体片がついて気が付くととっぷりと日はくれていて、部屋は薄暗い。
こういうときは決まって茨木が部屋の灯りをつけてくれていたのだが、今日に限っては違ったらしい。
本が読めなくなるから、とそっけなく以前言っていたのを思い出しながら部屋の灯りを付けた。
前にそう言っていた茨木はソファーで寝てしまっていた。
あまりにも気持ちよさそうに寝ているので起こすのもはばかられて、ベッドルームから毛布を持ってきてかける。
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