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彼の話をぼんやりと聞く。
蘇芳は恐らく自分のことは自分で何とかするだろうし、親衛隊という組織自体に思い入れもない。
そもそも手駒だ。思う存分切り捨てればいい。
元親衛隊ということで不便をすることはあるかもしれないが、俺はクラスメイトでさえフルネームと顔が一致しているか怪しい。
特に問題は無かった。
ぼんやりと顔を上げると、親衛隊長がいらだった声で怒鳴り散らしている。
ああ、大変だなと他人事みたいに眺める。
「お前達にはがっかりだ。」
無表情で蘇芳が言い捨てた。
その言葉を引き金にして、親衛隊全員が部屋から出て行った。俺を除いて。
ぼんやりとしたまま、蘇芳を眺める。
「一人になった、俺を哀れだと思うか?」
話かけられて、やや驚いた。
俺なんぞに話しかけるような奴だとは思っていなかった。
「いや、別に。」
そもそも、蘇芳はこの程度で折れてしまう様な人間には思えなかった。
蘇芳は笑った、気がした。
「なあ、茨木は何故俺の親衛隊に入った。」
まっすぐに俺の前に進んで来てそう尋ねる蘇芳を見上げる。
俺の苗字を知っていることにまず驚いて、それから、聞かれた内容が俺個人についてで驚いた。
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