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自分が手駒であるということは理解しているつもりだった。
特殊な環境にいる自覚はある。
特定の生徒を崇拝して、それを守ると称して親衛隊を設立していた。
全寮制の学園内のゴッコ遊びの様なものだった。
男しかいないのにそこを仮想の社会だと思いこんで、男役と女役を作って、それだけだった。
自分も最初はそういうものだと思っていた。
中等部に入学して、直ぐに選別が行われた様に思う。
実際の作業があった訳では無い。
ただ、自動的に容姿の良いもの、家柄の良いものが選ばれている様に思った。
正に、社会の縮図だった。
けれど、自分がどこかの親衛隊に入りたいとは思わなかった。
崇拝するような相手は見つけられなかったし、愛玩したい人物もいなかった。
この小さな世界の中で中高の6年間を穏やかに過ごすものだと、当時の俺は信じて疑っていなかった。
◆
彼のことは最初から知っていた。
そういうレベルの有名人ではあったし、何よりも同じクラスだった。
とはいえ、ヒエラルキーが違う。
こちらは彼、蘇芳を認識しては居たが向こうが俺のことを知っているかはかなり怪しいと思う。
どちらかというと影の薄いほうで特に特徴といったものも無い。
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