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×××の図書館
ここは×××の図書館。見付けて、貴方の本を。見失わないで、貴方の帰り道を。だってね、ほら、間違えちゃうと――。
☆
そこには数え切れないほどたくさんの本が収められていた。高く高く、どこまでも続いて行く塔。その壁一面に広がる本棚。色とりどりの背表紙には様々な言語でタイトルが付けられていた。臙脂色のフロックコートを纏う司書の男は本棚に掛けられた梯子の上から出入口を見下ろし、笑う。
「やあやあ、いらっしゃい。ここは×××の図書館。どんな本をお探しかな?」
鈍色をした革張りのドアを半分だけ開けて少女が顔を覗かせていた。年の頃は中学生くらい。穏やかに微笑む司書を見て、少女は安心した様子で館内に入ってきた。肩くらいまで伸びた黒髪、着ているものは制服だろうか。ローファーから伸びる細い脚は白いソックスで覆われている。
こっちへおいで、と手招きする司書に誘われて少女は歩を進める。
「真ん中に近付いてはいけないよ」
「どうしてですか?」
「君は帰らなきゃいけないからだよ」
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