×××の図書館

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 塔の中央部には柵が張られており近付けないようになっていた。柵に手を掛けて頭上を見上げてみると吹き抜けになっていることが分かる。「高い……! 地下はどれくらいあるんですか」と言って、少女は下を覗き込んでみた。そして、彼女の目ににはどこまでも続く闇が映った。底が見えないのだ。深く深く、ただ暗闇だけが広がっている。吹き上げてきた風に煽られて少女はよろめいた。 「ほらほら、いけないよ。落ちたら大変。ささ、こちらへおいで。貴女はどんな本をお探しかな」  少女は司書を見上げる。 「わたし、どうすればいいのか分からないんです」 「うんうん、そうだね。ここに来る人はみんなそういう人だよ。形式的に訊ねはするけれど、本を選ぶのは我々の仕事だからね」  司書は梯子から降りると少女の手を取った。そして、彼女を引き連れて階段を上ってずんずん上がっていく。辿り着いたのは何階だろう。何段も何段も階段を上ってきたため今何階にいるのかすら分からない。少女は膝に手を付き肩で息をしていた。対して司書は涼しい顔をしている。  その階の本棚には、日本語でタイトルの書かれた本が並んでいた。 「貴女の名前は?」  少女が答えると、司書は「ちょっと待っててね」と言って梯子を上って行った。待っている間、暇を持て余してしまったらしい少女は館内をぐるりと見回してから吹き抜けに歩み寄った。深い闇に引き寄せられるようにして少女は下を覗き込む。     
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