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「…この本は、私と彼女が…雪割(ゆきわり)と作った本なんだ」
ぽつり、ぽつりと、
「雪割は私の高校の一つ上の先輩で、私と同じ文芸部で、…私の、初恋の人だった」
とても優しい微笑みを浮かべて。
「彼女はとても美しかった。
黒い長髪を三つ編みにして、黒縁眼鏡を掛けていて、いつも本を読んでいた。
対して私は腕っぷしだけはまともな不良児でね、いつも教師に怒られていた。
…そんな彼女を始めて見た時は、体を雷で打たれた様な感覚だった。
…私はそんな彼女に憧れ、小説を書けもしないのに文芸部に入ったんだ」
「うわぁー…なんてロマンチックなお話…!」
桃ははにゃぁとうっとりとした顔で天都の話を聞いていました。
燈子はと言うと、特に表情を変える事無く、すぅとお茶を飲んでいます。
「…君達に託したその本が発行されたのは、雪割が高校最後の文化祭の時だ。
…その時の文芸部は私と雪割だけでね。
私に文芸部の維持出来るだけの実力は無いし、雪割が卒業してしまえば、文芸部は間違い無く廃部となるだろう。
だから私と雪割は、雪割の高校最後の思い出に、そしてその高校に確かに文芸部があった事の証として、その本を作った」
「それじゃあ天都さんの書いたお話もこの中にあるんですか!?」
「あ、ああ。
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