神々のシナリオ

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モノギ達の仕事はこれから生まれる人々の物語を描くこと。つまり人生を文章として連ねることだ。これは神である彼らにとってごく普通の職業であり、大半の者がこの職に就いている。 モノギも羽根の付いたペンを手に取りインクに浸す。そして自身の目の前に積み上げられたまだ未記入の本を手に取り、表紙を確認し捲り上げる。 「名前はまだ未定。 出身は日本、男の子か」 とりあえず物語を書く前に両親の物語を軽くおさらいし、内容を決める。 この子の両親は2年と3ヵ月後に事故で他界と記入されていた。何とも残酷な結末だろうか。幸いこの子のことは書いてなかったので、助かるのだろう。 モノギは何としても救ってやりたいと思い、その後の人生を華やかに遅れるように書き続ける。 「うん。 これなら良かったと思ってくれるだろう」 すると隣のデスクのミカから肩を叩かれる。 モノギは何事かと思い、顔を向けるとそこにはスマホの画面をこちらに向けたミカの姿があった。 「じ・か・ん!」 「時間?」 突きつけられたスマホの画面を確認すると11時21分と表記されていた。 「うそぉぉおお!」 「嘘じゃないわよ。 どれだけ手を入れてるのよ」 「で、でも可愛そうで……」 ミカは肩を落とし、深くため息をついた。 「あのねモノギ君。 君の気持ちも分かるけど、物語が書かれなかった子がどうなるか分かるでしょ~」 「はい。 ……分かっています」     
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