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「俺、杜崎さんはお尻がエロいと思うんですよね」
「あー!わかる!」
都子に投票したであろうバカな新人が、男しかいないのをいいことに声を荒げる。
「あいつらバカですよねー。まだまだ脳ミソが下半身に冒されてるんすよ。ちなみに、主任は誰に投票したんですか?」
上機嫌の月島が、俺の隣に腰を下ろした。同期を除いては、この男が一番話しやすいと思う。
「内緒。お前は?」
「杜崎さんですよ。あいつと俺で二票。主任も入れると思ってたんだけどなあ」
「まあ…嫌いじゃないよ」
「へえ。杜崎さんって、彼氏いるんですかね?年上だけど、綺麗だし落ち着いてるし、いいなあ、ああいう女性」
「…知らね」
内心、穏やかではなかったと思う。月島はいい男だし、仕事も早い。人懐っこいから敵も少ないし、穏やかな性格で俺とは正反対だ。たまに腹黒いと感じることはあっても、好きな女性は大切にするタイプだ。
月島が本気になったら、なんて思春期が抱えるような心のモヤモヤってやつが、急に襲い掛かる。
だから、普段なら聞き流せるような新人のバカな発言も、このときばかりは耳障りで仕方なかった。
「杜崎さん、口が小さいじゃないですか。だから、精一杯頬張って舐めてもらえたら最高」
「今、なんて?」
「…え?」
「お前が杜崎を語るなよ」
それしか言えなかった。諭吉を二枚月島に託して、足早に店を出た。年長者である俺がとるべき態度じゃなかったことは重々承知だった。雰囲気をぶち壊してしまった自覚もある。
でも、それでも、たとえ妄想だとしても都子が穢されるのは我慢ならなかった。
そのまま都子の家に向かい、玄関が開いた瞬間に彼女の姿を見たときは、泣きそうになった。
「何杯飲んだの?顔、真っ赤」
可愛いなあ。俺だったら、杜崎都子に百万票は投票するね。
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