その男、取扱い要注意。年中、猛獣。

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連休だけれど、外出の予定はない。 親しい友人はほとんど結婚し、育児に励んでいる。かろうじて、まだ子供を授かる予定のない麻衣と、海外に語学留学中の亜由美だけが、暇な私の相手をしてくれる。とはいっても、亜由美は無料電話で話をするぐらいだけれど。 冷蔵庫を開けて、食材の確認をする。まだとても夕飯の準備をする時間じゃないけれど、週末の夜は神田さんがかなりの高確率でインターフォンを鳴らす。 期待じゃない。ただの週課みたいなもの。 抗えないんじゃない。抗わないだけだ。 部屋の静けさに、少しばかり不安になる。このまま、インターフォンは鳴らないかもしれない、なんて。 先日家具店で買った、ローテーブルの上に投げられたリモコンに手を伸ばす。チャンネルボタンの二つが、少しだけベトついていた。神田さんはまた、スナック菓子を食べながらテレビを見ていたに違いない。 神田さんの方が少しだけ早く起きたとき、音量を最小限にしてテレビを見ていることに、私はずっと気付かなかった。いつかのタイミングでテレビ側に寝返りを打ったとき、液晶画面の光がわずかに眼球を刺激したせいで、うっすらと目を開けたときに気が付いた。 音量を上げていいと言っても、映像を見ているだけでいいと彼は言った。聴覚を重要視する私とはまるで違うなと、寝惚けた頭で考えた記憶がある。 やはりテレビの音があると少しばかり気は紛れて、集中力が増した。昔から、受験勉強も当時流行っていた音楽を聴きながら励んだものだ。 ノックをしても返事がないことから、母親にはやめるように何度も諭された。 「結婚、かあ」 誰もいない部屋で呟くと、当たり前だけれど返事はない。なぜかそれが、少し寂しかった。 打ち消すように、頭を横に振る。衝撃で、首が鳴る。ゴキゴキッと、二回鳴れば、気休めだろうけれどスッキリはする。 「早く来ないかな」 この発言は、アウト。 誰もいなくて良かった。
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