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2 夏、初恋
海へとつづくだらだら坂を自転車部のロードバイクが下ってくる。真夏の陽光でアスファルトには陽炎が立ち込め、自転車のか細いフレームはゆらゆらと蕩け始めているように見えた。少年は海へと坂を登りながら、彼女の言葉を思い出していた。
「私には需要がない」
彼女がなぜそんな風に思うのか不思議でならなかった。15歳という多感な年齢にありがちな自己憐憫に過ぎないのかもしれないと思った。
少年は坂をゆるゆる登りながら缶ビールのプルタブを押し込みグイと煽った、冷たい塊が胃の腑へ落ちていった。
「需要のある人間なんて、この世にいないんじゃないかな?」
僕は有り体な同情をしてみせることでしか彼女に寄り添えないと思った。本当は彼女への仄かな好意を伝えたかった、だが機敏な彼女に失望されるのが怖かった。
「今朝私が死ななくてもよい理由を考えたんだけどね、ないの、理由」
反芻しながら坂を登る、ビールはあっという間に飲み干してしまった。
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