2 夏、初恋

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 死ななくてもよい理由なんて、考えるだけ無駄だ、死にたがりの構ってちゃんにありがちな問いじゃないか。彼女はメンヘラ気質があるからすぐヤレるという評判が立っていた。たぶん事実そのとおりなのだろう。  少女が少女でなくなるのが破瓜ならば、彼女が弄んでいる存在意義の在処という問いはもうすでに少女でなくなってしまった彼女には稚拙で意味を持たない問題なのではないかと思った。  坂を上りきると一気に視界が広がった、海と空、水平線、波消しブロック、申し訳程度に砂浜、あまり綺麗な海とはいえない。 「あんたなんか産まなければよかった」少年の母は言う。 「俺の需要ね」 少年は自分が少年でなくなるにはどうしたらよいか、という問いを立てた。堤防に腰掛けて、波頭を見つめながら思案してみたが考えはまとまらなかった。苛立ちまかせに缶を蹴り飛ばした。ひしゃげた缶と靴が放物線を描き落下し、しばし漂った後、波間に消えていった。
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