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3 猫、死
少年には影のように付き従う小さな存在があった。
それは柔らかな体を擦り寄せゴロゴロと喉を鳴らす。なでるとサラサラの毛の下にゴツゴツとした頭蓋骨の感触があった。それは撫でてみるごとに固いともやわらかいとも表現できた。
輪郭のはっきりしないそれを少年は"ねこ"と名付けた。
猫、ねこ、ネコ、気品高く背筋を伸ばして座る様子はネコのよう、丸まって寝息を立てる様子はねこのよう、太い足や耳の軟骨、後ろ足の節などは猫のようだと感じた。
猫は少年によく懐いたが、ある夏の日急に姿をくらましてしまった。猫は死に場所を選ぶという、だが少年は猫が自分を裏切ったのだと思った。こんなに心配しているのになんて薄情なのだろう。
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