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「これは、涙が勝手に」
「光は母さんの再婚、反対か?」
「そういう訳じゃないけど。でも、なんか受け入れられなくて。だって知らない男の人がお父さん、パパになるんだよ?」
「ああ」
「あの女の子も家族になるんだよ? 由樹の妹になるんだよ?」
俺たち兄妹は親がシングルマザーということもあり、かなり距離が近い。
母さんにあまり負担をかけないように何かと協力していたからだ。
だから、俺は妹のことを光と呼ぶし、光は俺のことを由樹と呼ぶ。
俺は光に由樹と呼ばれることに違和感はなく、逆に心地良い気さえする。
光の言うこともわかる。けど、それも含めて俺は…
「ああ」
「怖く、ないの?」
「別に」
「どうして?」
「俺は母さんの幸せを優先したい。俺たちを女手一つで育ててくれたのは誰だ?」
「お母さん」
「だろ? 母さんは今まで一人頑張ってきた。だから、俺は母さんには幸せになってもらいたい」
「由樹…」
光を見るともう涙は流れていなかった。
先程まで暗い表情をしていた光はどこへやら、今はもう明るい柔らかい表情に変わっていた。
「うん。……そうだよね。私もお母さんには幸せになってもらいたい」
「よく言った。それでこそ俺の妹だ」
「ちょ、ちょっと、やめてよ由樹」
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