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またしても俺は光の髪をワシャワシャした。
今度は元気づけるためではなく、ただのスキンシップ。
光は口ではそう言いながらもどこか嬉しそうだった。
「それじゃあ光。母さんたちのところへ行こうか」
「…うん」
そうして俺たちは部屋から出て一階へと向かった。
ギシッ、ギシッと降りるたびに軋む階段。
その軋みは光の緊張を表しているようだった。
「母さん」
「光はどうだった?」
リビングに入ると母さんが光の心配をしてきた。
それに答える代わりに俺は、横へと避け背後に隠れていた光を表に出した。
「光」
「お母さん。私も、お母さんに幸せになってもらいたい。だから、再婚しなよ」
「光…」
「光ちゃん」
光の意志を知り、母さんは目から涙を零していた。
「本当にいいのね?」
「うん」
「わかった。私、裕二さんと再婚します」
「佳子さん…」
佳子とは俺の母さんの名前だ。
再婚相手の男性が母さんの名を呼んだ時、これから家族になるんだなと、どこか感慨深い思いがした。
「それじゃあ改めて、君たちのお義父さんになる佐々木裕二です。そして由樹君、光ちゃんのに妹になる佐々木紗英です」
「…」
やはりここでも俺と光の妹になる紗英は喋ることなく軽くお辞儀をしただけだった。
「紗英しっかり挨拶しなさい」
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