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この国は終わろうとしている。
四方を巨大な崖に囲まれた小さな国ローゴスト。人工は数えたことがない、およそ五百を下回るのではないだろうかとトンネルじいさんことグランドスが教えてくれた。
この国ローゴストに太陽が昇るのはほんの三時間ほど、そのほかは暗闇に支配されるため空気中に浮遊している電気力を吸収して明かりをつくり、畑や酪農を維持している。
しかしウィントスは草原で空を眺めた。
ウィントスは黒い髪の毛をさらっとかくと今までの記憶を整理する。
現実の世界、日本でトンネル工事をしていたら落盤してきてそれ以降、なぜかここにやってきた。
トンネルじいさんことグランドスにこの世界のことを教わってはや三か月。この国は亡ぼうとしている。
飢饉だ。食べ物なくなり、牛や羊、ヤギや鶏、すべてが死んだ。
ビスケットなどの加工品によって数カ月はもったが終わろうとしている。
そんなときトンネルじいさんことグランドスがウィントスに呟いた。
「あの山の向うにはたくさんの国がある。はずなんじゃ」
「爺さん、俺いってみてーよ」
トンネル爺さんこと、グランドスがナイスガイな表情を見せて、うなずいた。顎鬚はぼうぼうで口髭もぼうぼう髪の毛もぼうぼうとおっさんが笑って頷いた。
「なぁ、トンネルほらねーか?」
そのつぶやきはウィントスの小さな口からこぼれたものだった。
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