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「それも考えてはいる。わしとお主以外に元気なやつは数えてもほとんどいない、そんな彼等だって、ビスケットづくりに徹するしかない。ビスケットは米一粒と電気力の合成からできる。それはしっておろう?」
「あんたに教わったんだよ」
「そうじゃったなぁ。さきほど国王から指示がきた。わしにトンネルづくりを命ずるとな」
「よし」
「じゃがわしとお主だけでは足りぬ、モンスターを倒す戦闘のスペシャリスト、岩石を吹き飛ばす爆弾のスペシャリストが必要じゃ、わしとお主でえっちらえっちらと穴を掘る」
「それで、決まりだ」
ウィントスは初めて目の前に希望を見つけた。この暗闇に閉ざされたローゴストから出られる。そのことがとてつもなくうれしかった。
この国に未練はない、だからといって民衆が飢えで死んでいくのを黙って見ているほどバカじゃない。
「爺さん、フォンを誘ってもいいか?」
「ああ、いいぞ、あいつなら戦闘のスペシャリストだもんな、爆弾はこっちに知り合いがいるから任せろ」
ウィントスはトンネル爺さんと別れて、一人草原から市街にとやってくる。
回りを見ても誰もいなかった。
みんな家の中でビスケットがとぎれるのを心細く感じているのだろう。
途絶えた瞬間、自分たちは飢え死にし、この国が滅ぶ。
大きな欠伸をすると、目の前に一瞬で風のように現れた小型な女性がいた。
彼女はそばかすだらけの顔をこちらに向けてにいっと笑った。
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