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「私は文字だと思います。東方瑞雲は真言僧でもあったので、文字に宗教的な真理を見出しており、言葉に何かを託したのではないかと」
立川流の教義を簡潔に現した文字。岡崎はあらためてモニターを凝視し、何かを読み取ろうとした。
「いずれにしろこれでは判りませんね」
若い助手は諦めが早い。
「方法がないわけではないですが」
「と云うと?」
「熱を加えてみることです。九十度以上。ただし紙の状態から見て発火する可能性が高いのですが」
一瞬の沈黙の後、岡崎が口を開いた。
「試してみてもいいですか? 白紙の下の部分。もし熱に反応するなら、ここに頁数が記されている可能性があります。ここに熱を加えて判読出来るかどうか」
工学部の研究員が、ヒーターを加工した簡易装置を十分で作る。鉄板が熱せられ適温が確認された。
皆が見守るなか、岡崎は頁にあたる部分の小さな紙片をピンセットで慎重に置く。
熱で紙が曲がり始める、と同時に茶色い文字が浮かびあがった。
岡崎は急ぎピンセットで拾いあげた。
「〈一〇九〉頁がハッキリ読める!」
どよめきがおきた。若い助手は上気して声を上げた。
「本体を置きましょう! 大発見だ」
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