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わたしは長くない。そのことを聞かされたのはまだ、9歳の時だ。同じ年の子たちはきっと、お友達と一緒になって、学校を過ごしていることだろう。わたしはずっと病室の病床にいる。それはわたしにとって当たり前の日常。いつか治る。そう信じて眠っては目を覚ます。その繰り返しの日々だった。彼との出会いは、わたしが入院をする前の教室での席替えの時だった。幼き頃の出会いの気持ちが、将来に渡って残るかどうかなんて、そんなのはとてもじゃないけれど分かるわけもなくて。それでも、力の弱かったわたしの机と椅子を彼は一生懸命に運んでくれていた。幼いながらに、席替えするたびに彼はわたしを助けてくれた。この気持ちはきっと、他の人とは違う何かだったんだと感じていた。きっとこれは――
春が来て夏が来て秋が来て、冬となる。わたしはこの移り変わる4つの季節をあと、どれくらい感じることが出来るのだろうか。それはわたしには分からない。入院してからしばらくは、席替えで優しくしてくれた彼がお見舞いに来てくれたのを覚えている。それも移り変わりゆく季節ごとに来てくれたのを覚えている。
「また席替えの時は机、運んでやるからな! だから、早く元気になって学校に来いよ~! 俺、待ってるから」
彼は毎回同じことをわたしに言い残して、病室を後にした。彼の元気付けの笑顔、慣れない手つきでのリンゴの皮むき。一つ一つの動作が目に焼き付かれていく。そして幾月かの季節が移る。記憶では中学の頃までお見舞いに来てくれた気がする。わたしがいた病室はテレビはおろか、音も時間の流れも感じることの出来ない静かな部屋だった。そこへ彼が来てくれただけで一気に賑やかで、楽しくて、切なかった。
あなたは高校生になったのかな? さすがにもう来てくれないよね。時間って無限ではないのだから、わたしの為にあなたの時間を使わせたくないもの。だから、わたしは大丈夫。あなたをずっと想っているから。
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