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別に西園寺だけのためでもなく、耶俥が言い出したことはこうだ。 『最近やたらと強くて面倒な奴が多い』 確かにその通りで、利害の一致があったあの海原 夏樹と、後から映司さんから聞いた女が力を貸してくれなければ勝てたかどうかわからない。 神崎はあの事態がフユキの独断専行だったんじゃないかと言っていた。 組織の目的から外れた行為だったからこそあの二人が協力した…そう考えるのが自然だったし、恐らくその推測は正しいのだろう。 俺たちは組織の掌の上を踊らされているに過ぎないのだ。 「もっと強くならないと…」 微かに漏れた呟きは誰にも聞かれることなく、店内の賑わいに紛れていく。 このときの俺は、まだ気付いていなかった。 この焦りが後に大きな事件を引き起こすことになると…。
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