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「お前、相変わらず平気で語るよなぁそういうの。落語家にでも向いてんじゃないか?」
男は語りだすフユキに対して顔色を変えず、皮肉めいた事を言い出す。
「それはどうも。でも思うんやけど。『この程度』で壊れるような世界なんて、アンタも望んでへんやろ?言い方はあれやけど。『たかが1人の女が駄々こねて壊れてしまうモン』なんて、アンタには相応しくないんと違うか?」
そこで初めて男は表情を変えた。してやられたでもなく、素直に感心した…。そんな笑いだった。
「…ハッハッハッ!!言うねぇフユキ。何処からお前を非難する声が聞こえてきそうだ。確かにそうかもしれねぇ。簡単に壊れる玩具なんて確かに俺はいらねぇ。キッパリと捨てるだけだ。」
その瞳は何を見ているのか…。
次に放たれた言葉は、確実にフユキの胸中を予見したかのようなものだった。
「だがもしこの世界が壊れたなら…お前は『普通』に逆戻りになっちまうなぁ。」
「………ッ!!」
フユキの顔色が変わる。
いつもは笑顔を絶やさない彼が、その男にしか見ることが出来ない。
それは…焦燥。
その言葉に戦慄し、頬を冷たい汗が伝う。
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