赤い本

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「わかりました。では、そのときにこの本をお返しします」 桜子は本を受け取った。手に持った本は重たかったが桜子は落とさないように、かじかんだ手でしっかりと握りしめた。それを見た青年は少しだけ微笑んで頷いた。そして踵を返すと、夜の中へ溶けていった。  黒く染まった町の中。手の中の本だけは確かに色を持っていた。
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