彼女は僕だけの眠り姫

2/2
前へ
/2ページ
次へ
「最近すごく眠いんだ。」 普通の人だったら「寝ればいいのに。」と答えるところだか それが僕の好きな人だったら 話は変わってくる。 「眠り姫症候群」 僕はこの夏、彼女に気持ちを伝えた夏、初めてこの言葉を知った。 「私、決まった時間以外に寝るといつ目覚めるかわからないんだ。」 そんなでも君は私のこと好きでいられる? すごく衝撃的な告白だったそれに僕は動揺した。 でも、それでも、 「いいよ。受け止めてあげる。」 例え彼女が眠りについてしまう日が来るとしても 待ち続けようとこの日誓った。 「じゃ、じゃあもうすぐ……?」 その続きは怖くて言えなかった。 ようやく出た声もか細く震えているものだった。 「うん。もういつ会えるかわからないかもね。」 いつまでも待つ、と言っても本当にその日が来ると 彼女がいなくなるという実感が恐怖となって降りかかる。 「大丈夫だよ。目覚めるまで待つから。」 心の中の不安をかき消そうと必死に笑顔をつくる。 「ありがとう。」 嬉しそうにんふふ、と声を出して笑う彼女。 本当に僕は彼女が好きなんだなと改めて感じる。 「でも、もう無理かも……。」 普段は大きい瞳も眠気で少し小さくなっている。 目から溢れてきそうになるのを抑えようと天井を見る。 「本当は私も君のこと好きだったよ。」 囁くように発したその言葉に思わず彼女の方を向く。 だが、その瞼は閉じられていて 小さな寝息がすぅ、すぅ、と聞こえてきた。 彼女の柔らかい髪を撫でながら思わず笑みが零れる。 「くく…くくく……。」 この綺麗な髪も、大きな瞳も、小さめな唇も 何もかも すべて僕が好きにできる僕の所有物になったんだ。 何年も前から レンズ越しにしか見てきてない 僕の部屋にあふれている写真でにしか映っていない 大好きな彼女のすべてが 今、僕のものに。 「君は一生僕だけの眠り姫だ。」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加