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カトリと呼ばれた少女は、自他ともに認めるこの村最強の少女であり、そしてこの泣き虫アンリの姉なのだ。本来ならば、この騎士ごっこにおいて誰よりも魔王役にふさわしい存在なのだが、恐ろしくて誰もそんなこと口にできない。
少年たちが蜘蛛の子を散らすように去っていった後には、アンリだけが残されていた。
カトリは憤然としながらアンリに手を貸した。
真っ赤な目のアンリの視線の下で、カトリがふんと鼻を鳴らす。
「あいつら、毎度毎度懲りないんだから」
「ありがとう、カトリ。ごめんね」
「なんであんたが謝るのよ!」
「ご、ご、ごめん!」
姉にすらびくつくアンリ。自分のために怒ってくれていることはわかるのだが、怖いものは怖いのだ。
そんなアンリに、カトリが小さくため息をついて、手を差し出した。
「ほら、行きましょう。父さんが待ってるわ」
差し出された手のひらを、アンリは迷わず握った。
そして、二人は自分たちの家への道を歩き出した。
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