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と、低い笑い声が静かに響いた。
「どうかね、取り返しのつかない事をしでかしたという気分は。」
僕もジャンも答えられずただ目を閉じていた。
何て事をしてしまったのか。
「学びなさい子供達。その気持ちを忘れんようにな。」
目をきつく閉じたまま僕は深々と頭を下げた。
「遊びは掃除の後にするように。」
弁償するとどんな額なのかとか、世界中の信者から敵視されるのではとか、色々な事が頭の中でぐるぐる回って目眩がしそうになる中、牧父はのっそり部屋を出て行った。
そして、出てゆく間際にこう言い残した。
「良い機会だ。ここの物は全部外で焼いておくように。偽物だからね。」
思わず顔を上げる。
偽物?何でそんな物を!
僕の反応を知ってか知らずか、階上から低い笑い声が小さく聞こえた。
言葉を失って呆然としているとジャンは不機嫌そうに大きく息を吐いた。
「なんだよ偽物かよ!あれか、ハクをつける為造られてたって奴か!宣教舎が信者を騙して良いのかよ!」
「教義に嘘は禁止てのは無いからなぁ。」
僕は安堵のため息と共にそう漏らした。
「やれやれ、じゃぁ隣もその奥も全部紛い品って事かよ。」
「らしい、片付けちまおうぜ。」
肩の力が抜けてしまったけどひとまず大事には至らずに済んだ様だ。偽物でも聖アステロッタの御加護があった様だ。
ジャンは一度肩をすくめて落とした物の片付けを始めた。
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