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神聖遺物の偽物はすぐそうと判る物からやけに精巧な物まで全部で八つもあった。他の物が古めかしい木箱に入っていて銘も彫ってあるのに一つだけ鉄製の箱に納められ、中が分からない物があった。箱はひと抱えある様な大きさで他の物とは違い装飾の類は一切ないのが異質だった。
「気になるな。」
ジャンがまた言う。
「でも偽物だぜ?鍵だって丈夫そうだ。」
「偽物だし焼いちまうんだから良いよな。」
言うなり彼はその箱を聖アレシスの笏で殴りつけた。
「おい!」
偽物だって判っていても中々できる事じゃない…。
「いいじゃんいいじゃん。」
二度三度、鋼鉄の箱はびくともしない。
…と思われたのに、蝶番が吹き飛んでしまった。
やったとばかりに器用に蓋を剥がすジャンを止める手立てはなかっただろう。
だがその彼が動きを止めた。
中の物が壊れていたのだろうか、気になって明かりを照らすとそこには描かれていたのだ。
「おいおい…。いくら何でもやりすぎだろ…」
ジャンの言葉に僕はゆっくりと頷くしかなかった。
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