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ダークアンドライト
過去から人は逃れることが出来ない、絶対に。
高校2年の夏休みのとある日に、わたしは思い知らされた。
「あかねお姉ちゃん、こんにちは!」
時計の針が指し示す時間は午前11時で、たしかにこんにちはと挨拶する正しい時間なのかもしれないけれど、今は夏休み。わたしは少なくともあと2時間は布団の中でふわふわと夢と現実の間を漂うつもりだったのだから、ここはおはようございますが正解なのだ。
ただ当たり前だけれど、灼熱のごとき太陽光の降り注ぐ中をニコニコ笑顔でいる蛍ちゃんには知る由もないので、そのことを責めるわけにもいかない。
「……ほ、蛍ちゃん。なぜここに」
「おばさんに教えてもらいました!」
「……なるほどお……」
聞きたかったのはHowじゃなかったんだけど、とりあえず頷く。
蛍ちゃんの家から私の住む寮までは電車とバスを駆使しつつ結構な距離を歩かなければいけないはずなのに、たった一人で迷わずに辿り着けるなんて。最後に会ったのは中学3年の冬くらいだったと思うからあれから一年半、中学一年生になったのかな。成長したんだね……。
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