1人が本棚に入れています
本棚に追加
そして中学3年の秋、事件が起きた。わたしが中二病を卒業するきっかけになった事件だ。寒い秋の日だった。制服だけでは寒さを凌げないほどで、わたしは学校にコートを着て行った。そう、『紅』のコートだ。それだけだったらまだよかったのかもしれない、同級生が「わあなにそれかわいいねー」なんて言ってくれて、調子に乗ったわたしはやらかしてしまったのだ。そのシーズンにやっていたアニメが悪かったのかもしれない。わたしはコート姿のまま屋上へ続く扉の窓を破り、屋上に侵入して、給水塔によじ登り、風にコートをなびかせながら天に向かって呪文を唱えてしまったのだ。
……それを、ちょうど校庭に植えられた木々の剪定に勤しむ校長先生に見られた。
わたしが給水塔の上で最高にハイになっているときに泡を食って屋上へ駈け込んできたのは学校一怖い体育主任と、まるでヤクザみたいな外見の教頭先生で。すぐにわたしは校長室へと連れていかれた。最初はみんな優しかった。わたしが自殺するつもりだと思っていたらしい。そうではなかったことに気付くと一変して烈火のごとく叱られた。窓ガラスを割ったのが特に良くなかったのかもしれない。そのあといつも鞄に入れていた魔導書2冊が見つかって、仕事中の両親も呼び出され、ひたすらに治療が行われた。父から、母から、担任の先生から、体育主任から、メガネをかけた知らない女の人から、教頭先生から、校長先生から。
『魔法はないんだよ』
と。
その日、わたしはストレスからか初経を迎えて。
紅い経血と共に『紅』は死んだ。
それからの学校生活は思い出したくもない。高校の願書提出前だったのが、せめてもの救いだった。
「──ねえお姉ちゃん、『白の書』はどこ?」
「『白の書』は……燃やしちゃった」
「え、どうして!?」
「ん……危険だから、かな」
最初のコメントを投稿しよう!