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とんでもない台詞を吐きながら、蛍ちゃんはごそごそと、小脇に抱えたピンク色のトートバッグを漁りだした。
中から取り出したのは……それを見て目の前が真っ暗になる。頭の中を『あ』の文字が1京極夏彦くらい占めて、くらあ、と意識が飛びかける。……わかってはいた、玄関のチャイムが鳴ってドアスコープを覗いた先に黒コートを着込んだ通報待ったなしの人物が佇んでいたのを見たときから、そんな予感はしていた。
蛍ちゃんが誇らしげに、校長先生が生徒に賞状を渡すみたいにわたしに差し出してきたものは、彼女の着込んだ黒コートと同じく、真っ黒な本だった。よおく知っている。コートと同じで見覚えがある。見覚えがあるなんてものじゃない。
コートも、本も、わたしが作って、愛用していたものだよ!
「約束どおり、弟子にしてください!」
頭を地面につくかってくらいに下げる蛍ちゃん──その背中には、天使と悪魔の羽が片方ずつ、当たり前のように描かれていた……。
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