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昼間制服姿で学校に通う姉が、その制服の上に黒いコートを纏って夜の街を駆けていることを知った時と言ったら!
わたしの自意識をなんでも肯定して受け入れてくれる存在は、やめられないとまらないお菓子なんかよりもとても中毒性のある麻薬みたいなもので。
「……みんなには内緒だからね」
月に何度も開かれたお泊り会で蛍ちゃんへ話した物語は、荒唐無稽な出来の悪いなろう小説以下の妄想だったけれど、でもわたしと蛍ちゃんにとっては現実だった。時計の電池が無くなって針が泊まってしまったのは、時間と空間が凍結されて生界と死界が戦ったからだし、大きな地震は戦いの余波が第7世界を超えて現世界へと伝わってきてしまったせい。瞬く星が流れ消えてしまったのは天使か悪魔か、どちらかの誰かの命が尽きたから……電気もつけない、星の輝きしか見えない暗い部屋で二人黙とうをしてみたり。
わたしと蛍ちゃん、話し手と聞き手が二人とも真実だと想っているのなら、それは紛れもなく真実でしかありえなかった。疑う余地なんて何一つなく。
ただ一つだけ、問題はあった。
「──なんだかお姉ちゃんの部屋、雰囲気変わったね」
きょろきょろと目に映るものすべてが新しいみたいに部屋を見回している蛍ちゃんに、ウーロン茶をコップに注いで出してあげる。
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