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「ほ、ほら……一緒に住んでいる子がいるんだ。誰かと同じ部屋で住むとね、なかなか自由に出来ないものなんだよ」
10畳ほどのワンルームにはベッド、勉強机、本棚と箪笥を兼ねたものがそれぞれ2台ずつ、部屋を左右対称にする形で置かれている。蛍ちゃんはわたしが普段使っている椅子に座らせて、わたしは同居人の椅子を借りた。彼女は今実家に帰省している。
病気だったころのわたしの部屋は歪な七芒星の描かれたカーペットが敷かれていたり(勿論自分で描いた)、本棚には『エボラウイルスの恐怖』とか『ドグラマグラ』とか『死海文書』といった文字の並ぶ本が揃えられていたし(勿論読んでいない)、壁にはブリューゲルの絵画ポスターが飾られていた(叛逆天使の墜落)。病気が治癒された反動か、引っ越してからミニマリストとは言わないけれど随分と物を持たなくなったと思う……単純に、執着するものがなくなってしまっただけと言えるんだろうけど。わたしに遠慮しているのか同居人もあまり私物を部屋に置かず、他の寮生の部屋のごちゃまぜ感に比べると随分閑散としていると自分でも思う。
「ふーん……」
わたしの本棚のラインナップは教科書しかないので面白くないのだろう、しげしげと同居人の買い揃えている本の背表紙を眺めている蛍ちゃんにどうしたものかと考える。
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