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『約束どおり弟子にしてください』
と彼女は言った。覚えている……というか今日まですっかり忘れていた。
一緒の布団に潜り込みながら、懐中電灯の明かりを頼りに2冊の魔導書を秘密の部屋から取り出した本みたいに見せてあげた日々。これには沢山の魔法が書かれているの。手から光線を出して爆発を起こす魔法。大空を飛び回ることが出来る魔法。好きな人が自分を好きになる魔法。その時自分がこうできたらいいな、と願った効果を魔法としてただひたすらノートに書き連ねていたもの。白と黒で分けてはいたけれど実際のところわたしの中に厳密な境界線が引かれていたわけではなくて、なんとなくこっちは白っぽいよね、こっちは黒だよね、っていう曖昧模糊とした自分の判断で書くノートを変えていたに過ぎない。
「ねえねえあかねお姉ちゃん、蛍にも魔法見せてよ!」
何度せがまれただろう。そのたびにわたしは魔法なんて使えるはずもない、ただの地味な女子中学生の現実に引き戻されるのだった。まだ見せるのは早いかな、蛍ちゃんも命が狙われるから、色々な理由をつけて蛍ちゃんの前で魔法を使うことを断った。拗ねる蛍ちゃんにそのうちね、また今度ねと誤魔化し続けて。
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