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シュートの悪魔5
雨のためいつもより遅れて出勤した彼の前にあの男がいた。
「だから、俺は東でいいでしょう。なんで西なんですか」
こう叫ぶこの男は暴言を吐いて連行された例の男である。
なぜ、戻ってこれたのかと彼は思ったが、同時に罪悪感が少し薄れた気がした。何も言えずに見送るだけしかできなかった自分が少し救われた気がしたのだろう。気圧された課長が渋々担務表のシュート番号を書き換えた。楽なシュートに書き換えさせる人は珍しくないが、わざわざきついシュートに書き換えさせる人を彼は初めて目にするのだった。彼がこの男を憎めない理由がそこにあった。
だが、彼は何事もなかったかのように、その場を通り過ぎようとした。
「よう、久しぶり」
彼の肩に手を置いたこの男はまるで旧知の知人に挨拶するように彼を掴んで離さないのだった。
気がつけば、彼はこの男と同じ東の6番シュートにいた。今日は楽な西側のシュートだったのにどうしてこうなったのか、彼は理解できなかった。いや、本当は理解していた。この男のせいだと。
「今日は楽勝だな」
この男はそう言ってのけた。彼には波乱の予感しかなかった。
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