シュートの悪魔6

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シュートの悪魔6

荷物がひしめき合っていた。柔らかいダンボールの荷物はひしゃげて死に絶えようとしていた。彼はそれを必死に救うべく奮闘していた。単純な行為だ。荷物に書かれている仕分コードに従って同じコードが貼られているパレットに積み込めばいい。それをただただ繰り返しおこなえばいいのだ。それがシュートの日常である。 あの男の口癖は必要ないだった。 「必要ありません」 最近、長期アルバイトで入ってきたこの男は声高々にヘルプで入った彼を静止するのだった。 「警告音も鳴っていませんから、まだ大丈夫です。他のシュートを助けてあげてください」 シュートのヘルプに入った彼はこの男を心配せずにはいられなかった。入ったばかりだった自分もこんな風に意固地になっていたからだ。 だが、彼はそれを咎めることなく、一礼してこのシュートを後にするのだった。 それから数日経ったある日、シュートの一つが騒然となった。休憩前の誤区分点検をしている最中のことである。担務表であの男がいるシュートを確認していた。彼はまさかと思いながらそのシュートに駆けつけた。 そこには吐瀉物がリノリウムの床を汚していた。荷物にも吐瀉物の一部がかかっていた。 「すいません」 そうあの男は言った。 必要ありませんと言い続けたあの男がすいませんと何度も言っていた。嗚咽を漏らしながら謝罪するこの男を責めるやつはいなかった。もし、そういう奴がいるなら彼は手を出さずにはいられなかっただろう。ストレスがこの男を押しつぶしたのだろう。シュートに流されたダンボールが柔らかい荷物が他の荷物に押しつぶされるようにたやすくこの男を押しつぶした。 課長に運ばれていくこの男をを見送りながら、彼は覚悟を決めるのだった。
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