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荷物がレールの上を流れてくる。食品工場でのベルトコンベアにまだ出来上がっていない食品もどきが流れてくる。それに似ていた。荷物は出来上がっているが、気分的には同じようなものだ、と感じずにはいられなかった。シュートと呼ばれている供給口から流れてきた荷物が集まる場所の下には運ばれてきた米袋から漏れ出した米が片付けられることもなく散らばっている。誰かが米袋を破いたのか、それともシュートに来た時点で破れていたのか、判別はつかないが、いずれにしよ破損である。破損状況によっては修復して何事もなかったように配達局に送られる。米が少しばかり漏れたところで気にはしていないのだ。
シュートからこぼれだしたビン類が破損することもある。この局では卵やビン類などはすべて機械区分にかけられる。機械区分にかけないでくださいと書かれた紙がはられた荷物さえも平気で流れてくるのだ。シュートに荷物があふれるとシュートに入り切らなかった荷物がセンサーに引っかかり警報がなる。警報がなるとモニター前の担当がすかさず「荷物を引いてくださーい。お願いしまーすー」と言うのだ。警報音は実に不快で彼にとっての最大のストレスになっていた。さらに入ったばかりの新人の彼にベテラン気取りのおっさんが「さっさと引けよこらー」と暴言を吐くのだった。
休憩に入り、トイレに立ち寄った彼の前には幾人もの短期アルバイトの姿があった。
洗面台の前のおっさんは疲労困憊で、「元々公務員だったから、楽だと思って募集したけど、なめてたわ」と呟いた。長期アルバイトとして入った彼はその姿をみて将来を悲観せずにはいられなかった。こんな歳になってまでこのような場所に来なければいけなかったおっさんに自分の未来を重ねずにはいられなかったのだ。
そっと彼は個室に入った。腹の調子がおかしくて仕方なかった。
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