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当然のように到着便は遅れ、シュートに流れる荷物も少なく、比較的楽に過ごせるかと思われたその時、課長がのっそりシュートに現れた。彼の表情は引きつっていたが、たまたま一緒のシュートに入っていたこの男は余裕の笑みで課長の対応を受けた。
「悪いんだけど、超勤できるかなあ」
課長は担務表をもって彼らに迫ってきた。超勤とはいわゆる残業のことである。この男は快諾し、彼はいやいや了承して、課長は担務表に何やら書き込んでへらへらしながら帰っていった。
「休めば良かったのに」と彼は言った。
この男は無言で笑っていた。
彼にとってはこの男は理解不能であった。だが、不快ではなかった。シュートに入ってしばらくたっても彼は誰とも口をきこうとしなかった。そのとき、この男は彼に声をかけてきた。この男はシュートは退屈だと言ったが、彼は荷物に追われてばかりでただただ、この時間がさっさと過ぎ去ればいいとしか考えていなかった。
この男が休憩室で法律に関する本を読んでいたのを彼は何度か見かけた。法律関係の資格でも取るのかと彼は安易に考えていた。
ある時、法律の本になにか書き込みがあるのを彼が見て問いかけた。
「これは小説だよ」この男はこう答えた。
この男は今はいない。夏のお中元の繁忙期が終わり、10月の初めには姿を消していた。
担務表には退職と書かれていた。ある日、東京から来て、鴨川を眺めながら休日を過ごしているとこの男は彼に話した。
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