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 ある大学に一人の教授がいる。  とても研究熱心だったが、それ以外のことにはほとんど興味がないことが欠点だった。  とある日の朝、ゼミの学生が入室してくる。入ると、部屋には本の山がいくつもそびえ立っていた。本棚にも本が敷き詰められている。まるで古書店のようだったが、大きさや順番がバラバラだった。  掃除することにも興味がないのだろう、と学生は思った。  「必要な資料、取りに来ました」  教授は調べものをしながら、テキトーに返事をする。愛想のない教授に学生は溜め息をつき、その資料を探した。  学生はすぐに求めていた資料を発見する。それは本棚と本棚の間に挟まっていた。いくらなんでもテキトー過ぎるだろ。呆れながらも資料に手を伸ばしたそのとき、 「こら、触るんじゃない」  と、教授が怒鳴りつけた。学生が驚いて手を下ろすと、教授は一冊の本を持って向かってくる。そして、その本を本棚同士の間に差し込み、資料を抜いた。学生に資料を渡すと、また調べものを再開する。  変なこだわりでもあるのか、と学生は不満に思いつつも部屋をあとにした。
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