ささいなけんか

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ささいなけんか

「たまには家事を手伝ってよ!」 「忙しいんだから仕方ないだろう!」 「いつもそうやって! もう知らない!」  ささいなことから夫婦げんかになり、互いに何も語らず夕食をとる。  今日は俺が好きな卵焼き……なのだが、味があまり感じられなかった。  それが終わって、妻は無言で洗い物をはじめる。俺は書斎、と名付けた三畳一間の物置部屋にこもった。  こんなことがあるといつも俺は、机の中から、色あせた一冊のコピー本を取り出して、あの日の小夜子に会いに行ってしまうのだ。
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