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人造人体廃棄所
暗闇の中、彼は貪り続けていた。
彼と同じような姿形の何かを。
それは無数にあった。だが、彼のように動き、喰すものは他になかった。
彼は、それを喰するごとに少しづつ大きく、強くなっていった。
だが、彼は自分が何者か、ここは何処なのかを考える力はなかった。
命が尽きるまで貪り続ける。
彼の意識にはそれしかなかった。
だがある時、彼の目に僅かな光が差し込んだ。
天から微かな明かりが漏れ、彼は思わず見上げた。
何かが動いていた。
彼は手を伸ばし、動く何かを捕まえた。
それは喧しい音を発し、彼の手の中で暴れまわっていた。
暴れまわるそれを、彼は少しづつ喰していった。
美味。
今までに味わったことのない美味しさだった。
満足した彼はそのまま横になり、眠りについた。
ここはいるべき場所ではない。
目が覚めた時、彼ははっきりとそう感じた。
昨日喰した人間の脳から、彼は様々な知識を得た。
ここがどういう場所か。
何故自分がここにいるのか。
そして、このままここに居続けることは危険だということも。
彼は天井の蓋をこじ開け、外に這い出した。
彼は自分の姿形が通常の人間と大きく異なることを認識していた。
外の世界では化物扱いされるかもしれない。
だが、ここにいては処分されてしまう。
彼は新たな世界を目指して旅立った。
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