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アカネとたこ焼き
「なぁ、テストどないやった?」
「どうした、藪から棒に」
放課後の教室、人もまばらでほとんどの生徒が部活か帰宅している時間。本を読んでいたら2つ隣の席にいる無所属のアカネが、スマホをいじりながら唐突に話を始めた。
「気になるやん」
「気にしないでいい」
どうせ壊滅的だ。そしてアカネは全て90台。見た目軽そうでギャルなくせにほんとに頭が良く、なんでもできるズルいやつだ。
「ほなら当てたろーか? アベレージ40!」
どや? 当たりやろ? と言わんばかりに笑ってドヤ顔するアカネは、それでも憎めないやつ。
「アホか、50はいってるっつーの」
「ほー、ええやん。前より伸びてるやん」
しまった。ついペースに乗せられてしまった……。
「そろそろ帰るぞ」
本を閉じて席を立つと、アカネも「ほならあたしも帰ろっかな」と席を立つ。
「付いてきても、今日は奢らんぞ」
以前、何気なしに一緒に帰った時にたこ焼きを奢ったことがあり、それからというもの隙あらばたかろうとする。
「えー、なんやケチくさいな」
「毎度たかるやつのセリフじゃないな」
「ええやん、うちら付き合ってるんやし」
「……お前、こんな男といて楽しいのか?」
「え? あっははは!」
まるでスイッチが入った玩具のように笑い出す。
「自分アホやなぁ、楽しいし好きやから付き合うてるやん。そういうタカやんはどないなん? うちのこと好きやないん?」
……アホか。そんなアカネの笑顔が好きなんだよ。
「え? なんて?」
聞こえなかったのか、聞こえないフリなのか、意地悪くニヤニヤして言わせようとする。その手には乗らん。
「ほら行くぞ、たこ焼き食うんだろ?」
「えへへー、やっぱタカやんやなー」
「なんだそれ」
今日も結局アカネのペースに飲まれた。思い出のたこ焼きは今日も変わらず、あの時の味。
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