アカネとたこ焼き

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

アカネとたこ焼き

「なぁ、テストどないやった?」 「どうした、藪から棒に」  放課後の教室、人もまばらでほとんどの生徒が部活か帰宅している時間。本を読んでいたら2つ隣の席にいる無所属のアカネが、スマホをいじりながら唐突に話を始めた。 「気になるやん」 「気にしないでいい」  どうせ壊滅的だ。そしてアカネは全て90台。見た目軽そうでギャルなくせにほんとに頭が良く、なんでもできるズルいやつだ。 「ほなら当てたろーか? アベレージ40!」  どや? 当たりやろ? と言わんばかりに笑ってドヤ顔するアカネは、それでも憎めないやつ。 「アホか、50はいってるっつーの」 「ほー、ええやん。前より伸びてるやん」  しまった。ついペースに乗せられてしまった……。 「そろそろ帰るぞ」  本を閉じて席を立つと、アカネも「ほならあたしも帰ろっかな」と席を立つ。 「付いてきても、今日は奢らんぞ」  以前、何気なしに一緒に帰った時にたこ焼きを奢ったことがあり、それからというもの隙あらばたかろうとする。 「えー、なんやケチくさいな」 「毎度たかるやつのセリフじゃないな」 「ええやん、うちら付き合ってるんやし」 「……お前、こんな男といて楽しいのか?」 「え? あっははは!」  まるでスイッチが入った玩具のように笑い出す。 「自分アホやなぁ、楽しいし好きやから付き合うてるやん。そういうタカやんはどないなん? うちのこと好きやないん?」  ……アホか。そんなアカネの笑顔が好きなんだよ。 「え? なんて?」  聞こえなかったのか、聞こえないフリなのか、意地悪くニヤニヤして言わせようとする。その手には乗らん。 「ほら行くぞ、たこ焼き食うんだろ?」 「えへへー、やっぱタカやんやなー」 「なんだそれ」  今日も結局アカネのペースに飲まれた。思い出のたこ焼きは今日も変わらず、あの時の味。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!