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加奈子さんの疑問に、なぜか聡子さんは言葉を濁して答えてくれなかった。
夏休みが終わり、東京の自宅に戻った加奈子さんは仕事と育児に追われ、しばらく石のことは忘れていた。
師走に入り、年末年始はまたご主人の実家で過ごそうと連絡を入れたところ、
「今回は私たちがそっちに行かせて」
と、聡子さんから提案があった。
その後も盆暮れのたびに、義両親は加奈子さんたちの訪問を断るようになり、気づかないうちに何か失礼なことをしてしまったのかもと、加奈子さんは不安になった。
しかし、娘さんが三歳の七五三を迎えたとき、加奈子さんは聡子さんから、ようやくその理由を聞くことができた。
原因は、あの石だった。
「あのときは、本当のことが言えなくてね……」
そう前置きをして、聡子さんは石にまつわる真実を話してくれた。
あの場所で、過去に人を死に至らしめる成分を含んだ気体が発生していた事実は、記録としても残されている。しかし、亡くなったのは山菜採りに来た人たちではなく、飢饉や貧困を理由に子減らしの為にあの場に捨てられた子どもたちだった。
遥か昔、江戸の時代の頃。
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