一冊の本

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 一週間後。午前十時。その十分前に約束した神田駅へと香月はたどり着く。 「久しぶり」  きょろきょろと周囲を探している香月に背後から声がかけられる。  声の主は若い女性。香月が不躾に、目の前の女性を頭の先からつま先まで見る。長い髪を適当に結って背中に流している。顔に対して大きめな眼鏡は鼻から少しずり落ちていた。大きいサイズの薄手のパーカーに、ジーンズ、スニーカー。鞄は小さめのリュックというラフな格好。化粧気もない。  記憶に引っかかりを覚えた顔で、それでも確かな手ごたえが無かったのか、香月が首を横に振る。 「あの、どなたかと間違えて――」 「ないよ」  香月の言葉を途中で否定する。下がった眼鏡を戻した女性が苦笑した。 「酷いなあ。佐藤晶。もう忘れちゃったの?」  名乗りを受けて、香月が間抜けな声を上げる。 「あ、ごめん。なんか、前はもっとしっかり? した感じだったというか、雰囲気が違ったから」 「合コンはちゃんとして行かないと、由美たち怒るから」  肩を竦めて答える晶。 「まあ、えと、久しぶ……ん? 一週間、って久しぶりなのかな」 「あ、やっぱり気づいてないんだ」  晶がまた呆れ顔を作る。     
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