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 一番泣きたかったのは美都だけど、自分のためにクラスメートがわんわん泣いてくれるのを見ていたら、いつもの面倒見のよさが顔を出してしまい、みんなを慰めて最後は笑ってさよならをした。  引っ越しの日、両親は最後の点検に忙しかったけれど、子供の美都はやることがなくて、荷物が運び出されたマンションの部屋を見て回った。  がらんとして、素っ気なくなった部屋は、もうここに戻ることはないんだよって、思い出を見つけようとするのを冷たく拒んでいるようで、美都は辛くなった。  開け放った玄関の扉にもたれて、床をつま先でコンコン蹴って不安を紛らわせていると、同じマンションに住む、六人の友人達がやってきて、四つ葉のクローバーを探しに行こうと誘ってきた。  母にすぐ帰るからと断りを入れて、美都は仲間とマンションから数分の公園に向かった。  てっきりお別れの挨拶と手紙なんかもらえるのかなって期待していた美都は、ちょっとがっかりしたけれど、最後の思い出を作ろうとしてくれている仲間たちの前で、楽しそうに四つ葉を探し始めた。  探し始めるとげんきんなもので、夢中になってクローバーをかき分け、それぞれが手に戦利品を収めて満足気にハイタッチをした。  美都の母親が美都を呼びに来た時、笑顔だったみんなは、いよいよお別れなんだと悟って、誰もが神妙な顔になって、無言でマンションに戻っていった。     
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