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 そして、いよいよ出発の時間がやってきて、美都が車のドアを開けたとき、仲間が一斉に四つ葉のクローバーを差し出した。 「あっちに行っても元気でね」 「僕たちの四つ葉を受け取って!みんなの分まで幸せになってね」  美都は気の利いた言葉を返すことができず、手の中に咲いた四つ葉のブーケを見下ろしながら、うんうんと頷いて、声を絞り出した。 「あり・・が・・と・・」  走る車を追いかけるみんなに手を振ったけど、涙でぼやけて顔なんてもう見えなかった。  今日は北国小学校の初登校日。  寒さに震えながら、美都はカーテンを開けて驚いた。  屋根も庭も、一面真っ白だった。  雪が積もった記憶をほとんど持たない美都は、寒さも忘れて、目に沁み込んでくるような純白の世界を、神聖な気持ちで受け止めた。 「お父さん、お母さん。雪が積もってる!」  階段を駆け下り叫ぶと、父も母もこっちでは積雪なんて珍しくないんだよと言って笑った。  寒さにかじかんで、もこもこに着込んだ美都が登校班の集合場所に行くと、地元の子供たちはまだ軽装で、美都の重装備をびっくりしたように、上から下まで眺めた。 「はじめまして、春野美都です。よろしくお願いします」  良い印象を与えようとして、美都がにっこり笑って挨拶すると、みんなは顔を見合わせてから、一斉に美都に話しかけた。     
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