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 次の日学校へ行くと、真里菜という女の子が近づいてきて、美都の誕生日を聞いた。  誕生日の言葉は分かったので、4日後の日曜日と答えると、元のグループへ戻って小声で喋っている。  ひょっとして自分のことだろうか?そんな小声で話さなくても、あまり聞き取れないから大丈夫と言いたいところを我慢して、ぽつんと椅子に座って教科書を開く。  言葉が分からないと言ったら、馬鹿にしていると思われるだろうか?  そんな不安が美都をクラスメートから遠ざける。  無理に分かったふりをしなくていい分、一人でいる方が楽だった。  まるで北国の寒さで、心まで凍ってしまったように感じた。  次の日の朝食の席で、食欲も口数も少なくなった美都を元気づけようとした両親が、普通のことをさも面白そうに語って、笑いに誘おうとするのが気に障り、美都は早々と支度を済ませて部屋を出た。 「行ってきます」  俯きながら玄関を開けると、目の前に真っ白な小さな雪だるまがちょこんと座っていた。  辺りをきょろきょろ見渡しても、誰もいない。  美都たち家族の借家は、柵がないオープンスタイルなので、入ろうと思えば、誰でも玄関アプローチや、庭に入ってこられる。 誰だろう?と思いながら、雪だるまを掌に載せると、じんわりと寂しさが溶け出して、指の間からポタリと滴った。     
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