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まるで生きているものを扱う様に、雪だるまをそっと庭に置いた美都は、名残惜し気に何度も振り返り、集合場所に歩いて行った。
次の日の朝、美都はわくわくしながら玄関を開けた。
すると、そこには昨日より少し大きな雪だるまが2体座っていた。
美都の弾んだ様子につられ、玄関から外を一緒に覗いた両親が、顔を見合わせてにっこりと笑った。
「かわいいいたずらをする人がいるのね」
母親が美都と並んでしゃがみ、雪だるまの頭をちょんと指先で突っついた。
「うん。誰が作ったのかな?これ2体あるから恋人どうしかも・・・」
登校まで時間があったので、美都は自分の部屋からフェルトを持ってきて、目と鼻と口を切り取り、雪だるまに顔を作ってやった。
上手だなという父の誉め言葉が嬉しくて、軒に下がった氷柱を折ってもらい、雪だるまの両手も作った。
キラキラ光に輝く氷柱の両手は、希望を受け止めているようにも見えて、美都はここにきて初めて、心からの笑顔を見せた。
教室でも、萎縮していた気持ちが解れたせいか、今まで聞き取れないと思いこんでいた方言に、案外馴染んでいる自分を発見して、積極的に人の輪に入っていった。
次の日の土曜日、学校が休みの日はいつも寝坊をする美都が、登校時間には飛び起きて、一目散に玄関にいって扉を開けた。
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