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少なくとも自分は、あの祖父ほど傲慢で人の心の分からない人間じゃない……。
そう思いたかったが、ここで花衣は、先ほどの藤緒の言葉を思い出した。
一砥がLuZの社長職を退いて、ずっとマンションの自室に引きこもっていると。外食すらせず、食事もデリバリーで済ませていると。
「あの……亜利紗」
花衣は電話の目的の一つを思い出し、重い口を開いた。
「あの……一砥さんのことなんだけど……」
「え、社長?」
「うん。あの……LuZの社長を辞めたって聞いたんだけど……本当なの」
「ああ、それで電話して来たんだ。うん、本当だよ。丁度一ヶ月くらい前かなぁ。前から代理の社長が来てたし、その人に仕事の引き継ぎっぽいことをしてたから辞めるんだろうって。皆、噂してたし。武並さんの話だと、会長にももう相談済みってことだったから、みんなあんまり騒ぎはしなかったよ。いよいよ月光堂グループの本社経営に加わるのかなって」
「そ、そうなんだ……」
どうやら亜利紗は、一砥が引きこもっている件は知らないらしい。
花衣の方からもその話は言い出しにくく、仕方なく花衣は、今日O-Cで真邉藤緒に会ったことを話した。
「へぇ、真邉の小母様に会ったんだ」
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